日本時間7月19日~20日の2日間にわたって開催されたイベント Microsoft Inspire 2023 では、AI技術を中心として様々な発表がされました。 Bing Chat Enterprise や Microsoft Copilot の価格が明らかになるなど、注目の発表が盛りだくさんでしたので、その中でも特に注目したい内容をピックアップしたいと思います。
Microsoft Inspire とは
Microsoft Inspire は、米マイクロソフトが毎年夏に開催しているパートナー企業向けのイベントです。以前は Microsoft Worldwide Partner Conference(WPC)という名前でしたが、インスパイア(刺激を与え合う)に改称され、より積極的な情報発信や参加者との交流を深める場としてのプレゼンスが高まっています。
注目ポイント
1.Bing Chat Enterprise のロールアウト
Microsoft Edge に搭載された Bing AI では、従来のキーワード形式ではなく、会話形式で質問をして回答を得る情報検索ができます。さらに、表示している Webページの要約をしてもらうといった使い方や、アイデアを AI にブラッシュアップしてもらうこともできます。
便利な AI の活用に期待が高まる一方で、入力した機密情報が AI学習に利用されてしまうのではないか? という懸念から利用を禁止する企業もありました。
そこで、入力された情報・出力される情報が組織外に漏えいされない Bing Chat Enterprise がロールアウトされました。 Bing Chat Enterprise は出入力データを見られたり、AI学習のために保存されたりしないので、安心してビジネス利用できます。
Microsoft 365 E3、E5、Business Standard、Business Premium ライセンスのいずれかをお持ちであれば、追加コストなしで利用可能です。それ以外のライセンスをご利用の場合は、将来販売開始されるスタンドアロン版の有償プランをお待ちください。(1ユーザーあたり月額5ドル)
2.Microsoft 365 Copilot
Copilot (副操縦士)という名のとおり、ユーザーの Office製品を使った業務を手助けしてくれる AIサービスです。
Microsoft 365 E3、E5、Business Standard、Business Premium ライセンスのいずれかを前提にアドオンとして、1ユーザーあたり月額30ドルの追加コストで利用可能になります。
1ドル140円とすると、140×30=4200円です。
Microsoft 365 E3 とほとんど同額ですので、高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、時給1000円の従業員が月に4時間ほどの非生産的な業務を Copilot に任せて、その分を生産的な業務に割り当てられるとしたら、十分に元が取れそうだと思いませんか? それでは具体的にどのような業務が Copilot で効率化できるか、例を2つ紹介します。
①Teams 会議の内容を要約
現在の Teams も会議録画と自動文字起こし機能で議事録の作成はできますが、それがさらにパワーアップされます。議事録の要約や人のタスクを自動でまとめてくれる上に、Copilot に文章で質問して会議内容を答えてもらうといった秘書のような役割も担ってくれます。
- スケジュールが合わずに参加できなかった会議内容の確認
(人に聞くと相手の時間も奪ってしまいますよね。) - 参加者の予定を合わせるためのスケジュール調整作業 etc…
Web会議が普及したことで「会議室に全員集まらなければならない」という物理的な非効率は克服できましたが、まだまだ効率化の余地がある業務だと言えます。
②添付ファイルからメール本文を作成
添付ファイルを要約してメール本文を考えてくれる機能も Copilot に含まれます。本文の文章量や固い文章・カジュアルな文章など本文の生成状況を1ボタンで調整できます。 動作イメージの動画が Microsoft の YouTube チャンネルにありますのでご覧ください
Microsoft 365 Copilot in Outlook
この機能が普及したら、日本特有のビジネスメールのあしらいを辞めようという風潮も出てくるかもしれませんね。慣れれば楽な定型文ですが、慣れるまでに「○○メール 書き方」で検索して良い表現を見つけるまでに費やしていた時間を、未来の新社会人は効率化できるのだと思うと羨ましいです!
3.Power Automate での Process Mining 一般提供
プロセスマイニングとは、組織内のシステムのログを収集し、業務プロセスを分析・監視するための技術です。特定のプロセスで時間や手間が多くかかっているなど、課題発見に役立ちます。 Power Automate での Process Mining では、フローを AI が分析して、ユーザーにプロセス改善の提案をしてくれます。業務プロセスのテンプレートが用意されていますので、これまでプロセスマイニングを知らなかった方でも、これから業務改善を検討するための練習機能としても利用できそうです。
以上が Microsoft Inspire 2023 で特に気になった発表内容でした。この記事で「良い刺激を受けた!」と思う方は、周りの方に内容を共有してインスパイアしてみてくださいね!